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雑記帳

【ネタバレ】めでたしめでたしのその先は? 哀愁しんでれら 感想

先日、アマプラで「女子高生に殺されたい」を見ました。

原作は途中まで読んでる状態で、映画化発表のときも「え~実写化するんだ……東山が田中圭さんなのは意外だな~どうなるんだろ」なんて思っていたのですが、これが意外と良かった……!原作通りか?と聞かれたらちょっと違うかなと思いますが映画版としては程よい感じにまとまっていたのではないかと思います。

で、もっとやばい田中圭を見たい!!と思った私は関連で出てきた「哀愁しんでれら」も視聴したのでした~

 

 

「哀愁しんでれら」

youtu.be

 

あらすじ

足のサイズしか知らない王子様と結婚したシンデレラは
本当に幸せになったのでしょうか?

児童相談所で働く⼩春は、⾃転⾞屋を営む実家で⽗と妹と祖⽗と4 ⼈暮らし。母に捨てられた過去を抱えながらも、幸せでも不幸せでもない平凡な毎⽇を送っていました。
しかしある夜、怒涛の不幸に襲われ⼀晩ですべてを失ってしまいます。そんな彼女に手を差し伸べたのが、8 歳の娘・ヒカリを男⼿ひとつで育てる開業医の⼤悟。優しく、裕福な⼤悟は、まさに王⼦様。「ただ幸せになりたい」と願う小春は、出会って間もない彼のプロポーズを受け⼊れ、不幸のどん底から⼀気に幸せの頂点へ駆け上がりました。
シンデレラの物語ならここで“めでたしめでたし”。
しかし小春の物語はそこでは終わりませんでした…(公式サイトより引用)

 

まず序盤から、土屋太鳳さん演じる小春に怒涛の不幸が襲い掛かります。ここがまあ~テンポが良くて、ピタゴラスイッチ方式みたいな感じでガンガン落ちていくでいっそ爽快感すらあります。ただ、転落人生ものをいくつか見てきた身としては不幸度がちょっと低いか……?とか思ったりもしました。でも、ここはほんとに序章にすぎないというか、結婚してからが物語スタートなので……!その後の展開を考えてると、むしろこれぐらいの不幸度が妥当なのかも。

 

不幸の連続に襲われたお姫様は死にかけていた王子様を助けます。今思うとこのシーンは人魚姫要素でもあったのかな。人魚姫は他のお姫様に立場を譲ることになりますが、小春は大悟にきちんと見初められました。難しい子だという大悟の娘 ヒカリともすぐに打ち解け、周りに祝福されながら夢のような結婚生活へ…………

 

とはならなかったんだよな~~~~~~~~…………

 

このまま幸せになれると思った?残念でした!と言わんばかりのイヤ~~~な雰囲気が小春を包んでいきます。大悟もヒカリもなんか……あれ?あーっ???あ、そういう……あ~~~~もうばか~~~~~!!!!みたいなことを終始、妹と言い合ってた気がします。色々おぞましいよ。

でも、序盤から示されてるんですが小春も小春でなんかあれだな……って描写がちらほら挟まるので、ぎりぎりまで誰の心情も信用しきれないというか、誰もかれもがぐらぐら危うくて怪しい状態を最後の最後まで続けてくれたのである意味見やすかったです。小春が完全に被害者だったら最後まで見るのが辛かったかもしれない。

 

ヒカリの怒涛のサイコ!サイコ!サイコパス!!!!!描写の連続、うぎゃ~~~ってなりましたね。手段がえげつない。好きな男の子に対する感情も、恋愛感情というか……うーん。おそらく、実母もヒカリが上手いことやって追い出したんだろうなあ。

 

大悟母による過去話や、自室での様子、うさぎのはく製のエピソードなどを聞くと、大悟とヒカリはこの親にしてこの子ありって感じだなと思いました。母との不仲とか学校でうまく馴染めなかったことを考えると切なくなるのですが……。

 

ヒカリに疑惑の目を向ける小春がおにぎりにマグネットを仕込む描写とか、おや……?って感じで良かったですね。こことか、ヒカリに手をあげてしまった後に大悟に怒られつつも肉を焼くシーンとか好きです。

 

序盤でさ~~~小春のお父さんがインスリンの話するから「あっ…………これ絶対……」とは思ってたんですけど!まさかあんなダイナミックな使い方されると思わないじゃん!!!でも、あのあり得ないだろ!!!って感じが童話っぽい終わりで良かった…のかな?と書いている今では思います。この映画はシンデレラ以外にも様々な童話要素がちりばめられていますが、このラストも童話のパロディだったのかな…眠れる森の美女かと思ったのですが、どうでしょう。紡ぎ車の針=注射針とか、子供たちの眠っているような遺体=お城の人たちが眠った姿みたいな感じで。

 

私が気づけたおとぎ話要素はシンデレラ、不思議の国のアリス(大悟のうさぎ)、赤い靴(お葬式のシーンでのヒカリ)くらいだったのですが、色々な方の感想を読んだら青髭幸福の王子を挙げている方もいらっしゃって、なるほど~ってなりました。もしかしたら探せば他の童話要素もあるのかもしれませんね。

 

……と、ここまで書いたところでパンフのネタバレ込みの感想を書いている方を何にか見つけたのですが…………ヒカリやってないんかい……………!!!!!!!!うわ~~~完全に監督の掌の上じゃないですか私……!!客観視していたつもりが知らず知らずの内に小春に同調しちゃってたんだなあ……「帰ってきたヒトラー」とかもそうですが、観客面して高みの見物してたつもりがいつの間にか舞台上に引っ張りあげられていたことに気づく瞬間には独特の気持ちよさがありますね。こういうのが好きで映画見てるところある。

 

多くの人にころころ転がされてほしいので、もっとたくさんの人にこの映画を見て感想語ってほしいなあと思います。アマプラにあるから見やすいよ!

 

これ系の映画もうちょっと探そうかなあ。

【ネタバレ】「あたし、どうしようもないことって好きよ」 芙蓉の浄土に安き給う 感想

 

いや~~~~~めっっっっっっちゃくちゃ良かった……………………………………

 

この記事は「芙蓉の浄土に安き給う」という18禁乙女向けノベルゲームのゆるゆるとした感想記事です。ネタバレありなので未プレイ方はご注意ください~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

www.dlsite.com

 

■ストーリー

フレキシブルに成長するとある国の都市。
流れ者の女――ミータオは、幼馴染のリョウと共に住処としていた貧民窟を政策で取り壊され、
今ではストリップ劇場の踊り子をしながらアパートで二人暮らしをしている。
かつて悪い薬に侵されていたリョウは、ミータオの介護をうけて薬断ちの最中だ。
そんなある日、ステージに一目惚れしたという富豪の男・ウツブシがミータオをつけ回すようになる。

ウツブシは言う。
「君は本当は、こんなところにいるべき者ではないのではないか」
リョウとミータオの関係は少しずつ壊れていく。

 

■概要

「芙蓉の浄土に安き給う(ふようのじょうどにおきたまう)」は背景、文章、音楽、音声のみで進行する一本道の18禁サウンドノベルです。

どこか噛み合わないまま日々を過ごしていく男女や、
出自からして自分を肯定する力が一切なく生きていることが後ろめたい男や、
そんな男を心から愛して支えようと空回りを続ける女や、
選択によってはけなげな女が、実にあっさり別の男に奪われてしまう展開が好きな人におすすめです。

つまり今回はマルチエンドです。選択肢は一度、エンディングは二種類です。

恋仲の男女が引き裂かれて、女が他の男に寝取られる展開を好ましく思わない方へはあまりおすすめできません。(DLsite様より引用)

 

はい!そういう展開大好きです!!……ということで、プレイさせていただきました。

 

プレイ時間は大体1時間ぐらいでした。音声全て聞いているわけではないので、ちゃんと再生したら2時間はかかるのかも。立ち絵とスチル無しなのは初めちょっと驚きましたが、プレイしていく内にどんどん物語にのめりこむことが出来たので、そこらへんは気になりませんでした。BGMが物語にしっかりあっていたのも良かったですね~「夢の時間」が一番好きです。

 

・ミータオ

ミータオの性格とか、言葉選び、ものの考え方、色んな要素が刺さりましたね……乙女ゲーやギャルゲープレイするときは主人公の性格や好きになれるかを割と重要視するタイプなのですが、ミータオはそんな私の心にどかーんと来てくれて良かったです……乙女ゲームの主人公をするタイプの女の子ではないと思うけど、そこが良い。こういうタイプの女の子が主人公で、ミータオとリョウちゃんのどうしようもない関係が乙女ゲームという枠内に収められていることに萌えますね。

手塚りょうこさんのお声を今回初めて聴いたのですが、かわいくてかわいくて……!!!!幼さを感じさせる鈴を転がしたような声がミータオにピッタリで、「原作と声が同じ!」と思いました。原作この作品なのに。

私がこの作品を購入する最後の一押しになったのが、記事タイトルにも引用させてもらったミータオのセリフでした。「あたし、どうしようもないことって好きよ」です。この台詞、序盤と終盤で出てきます。序盤ではあっさりとミータオがこの言葉を口にしたので「重要そうだったけど結構さらっと出てくるんだな~」くらいに思っていたのですが……終盤での使いどころが、ああ~~~~!!!!ここ!!!ここで来ますか!!そうですよね!?ここしかないですよね!!!!!!!って感じで……プレイした方ならわかっていただけると思うのですが、もうほんとドンピシャなとこで出してくるなあって思いました。そりゃあ、あのシーンに合う言葉はこれしかないよ。

ミータオの過去についてはああそっちも……ってなりました。予想していたものよりエグさマシマシのものをお出しされた。でもミータオの過去も踏まえてウツブシへの萌えが加算されるな……という良くないオタク感情も湧きました。

 

・リョウ

キッツ………………生まれてから、というか生まれる前から今日まで人生キツすぎるエグすぎる。ミータオに出会えたことが唯一の幸せであり最大の不幸であるリョウちゃん。性格とか考え方とか何から何まで明るい未来が見えませんが、そもそもリョウちゃんがこうなったのは悲惨な境遇のせいで……という悪循環ぐるぐる男です。はじめから詰み切っている男の描写が上手い……。加えてミータオという女神の存在が今のリョウちゃんを完成させたわけですが、そもそもミータオがいないと多分リョウちゃんは精神的にせよ肉体的にせよとっくの昔に死んでいて……でもいっそ早めに人生終わったほうがまだ幸せだったのか……?と考えていたところにあのEDですよ……!!!ミータオが思っていたこと大体ぶちまけてくれたのでいっそ爽快感すらありました。リョウちゃんはどうしようもない甘ちゃんなわけですけど、そんな赤ちゃんみたいなリョウちゃんがミータオは好きで好きでしょうがないんですよね……。それは恋というには甘さがなく、愛というには重すぎる感情な気がしますけど、名前を与えてくれたあなたとずっと一緒にいたいというある意味純粋すぎる感情に突き動かされた結果があの実質心中EDだと思うと……。

ウツブシEDでの彼もね……そういう死に方か~~~……ってなりましたね。自殺とか餓死とか中毒死とか事故とか、そういうのだけで済ませないのが辛いけどリョウちゃんらしい終わり方だなあとも思います。ミータオもなんですけど、リョウというリアルにもいそうな人物(境遇ではなく、物事の考え方とかそういう部分です)をキャラに落とし込みつつ書ききるのがすごいなあと思いました。なんかこう、こういう人間はこういう考え方をしてこういう転がり落ち方をしていくだろうな……って納得がいく描写のしかたというか……語彙力なくて申し訳ないです。

 

・ウツブシ

いや、好き~~~~~~~~~~

クリア後に読める製作者インタビューで、シナリオをお書きになった山野様が「リョウちゃんとウツブシなら、世間ではウツブシ派の方のほうが多そう」みたいなことを仰っていまして……見事にウツブシ派な私は変な声を出しながら読んでました。

ウツブシ好きな方の8割は一致すると思うのですが、私が一番好きなウツブシはリョウEDのウツブシでして……!!絶対に手に入らないものをいつまでも追い続ける傲慢な男だ~~~いすき!!!!!!!それまでのどこまでも嫌味な金持ち男のウツブシも可愛くてニコニコしながら読んでいたのですが、あのラストでもうほんと「待ってたよ!!!!!!」って満面の笑みを浮かべました。ウツブシくん、君のような人間はああいう展開が一番輝く。久々に好みドンピシャの高慢ちきな金持ち男を浴びられて私は幸せです。

ひたすら悲痛な運命に翻弄されるかわいそ可愛いリョウちゃんに対し、ウツブシは自我バリバリというか自分は持っている男だというような主張をしてきますが、彼等の本質?根本?はそう変わらないんだろうなと思いました。……なんだろう、どちらも親やミータオ存在によって現在の人格が形成されていますし……ウツブシは「君は罪の子。この娘を娶るようにと父が命じた。私はそれこそが力であり、人間であると首肯した」「父からすれば、飼い犬に手を噛まれたも同然だ。その雪辱を濯ぎ、改めて君の心を手折ってこそ私の力が誇示される」と口にしています。彼からすればミータオを支配することは罪と父の存在を越えること…それらをも支配すること……彼の人生に絡みつくそれらを支配して初めてウツブシの力が誇示される……でもそれに執着している時点で、それはある意味ウツブシもまた支配されていることになるのでは?いやでも、それをわかってるから支配したいわけで……みたいなことをぐるぐる考えています。私に考える力が無さすぎるのが残念ですが、やっぱり無い頭なりに考えて、そういうウツブシが好きだなあと改めて思いました。

 

ウツブシとリョウちゃんがそう変わらないならウツブシにも可能性はあったのかというと、それは多分なくて……私は彼はどんな運命でもミータオの心に真に響くことはないのだろうと思います。リョウENDのように人間らしいところを見せられればまた別かもしれませんが……でもあれはミータオが本当に女神になった結果だからなあ……
阿芙蓉の浄土に逃げ出されてはじめて「好きよ」という言葉を貰えるウツブシくん……かわいい…………

 

・スファン

他ゲーだったら絶対ルート開くやつじゃん!!!メイン二人のED見てタイトル戻ったら「新たなシナリオが解放されました」って表示されるやつじゃん!!!!

キャラ的に一番乙女ゲーっぽくなかったですか???いや、スファンもルート入ったらヤバ男なのかな……。容姿とか喋り方とか垣間見える性格とかここまで乙女ゲーの登場人物です!感を出しておいて攻略出来ないのバグじゃん……派の私と、この作品のヒロインがミータオである限りスファンは攻略対象にならない派の私がいます。調べたらウツブシと一緒に音声作品が出ているそうなので、有難く購入させていただこうと思います……!スファンの作品が出るの、オタクの需要をめちゃくちゃ把握されている……。

 

 

面白かった……癖にぶっ刺さった……キャラも世界観もストーリーもBGMも、どれも素敵でした。楽しい時間をありがとうございます。サキュレント様のゲームは「ドブ川に散りぬ初恋の」と「慰愛の詩」を購入済みですので、時間を置いてプレイさせていただこうと思います。今はもう少しふようどの余韻に浸っていたいです。ああ~~~良かった!めっちゃ良かった!!

最後にめちゃくちゃにされたいよ

物語の最後の最後で情緒をめちゃくちゃにされるのが大大大好きです。

 

 

もうすぐ読み終わるなぁ~あ~……ってときに急に横っ面を張られて、え?え?え?ってなってる内に強制的に物語の外へ放り出されるのがたまりません。お話は終わりだけどこっちの情緒は追い付いてないよ!余韻がえぐいよ!!ってなって、でも日常に戻らなくちゃいけなくて……

映画の場合だと、朝一で映画館で映画を見て、感情を揺さぶられまくって、心の整理がつかないままエンドロールが終わって、他のお客さんのあとに付いていくようにシアターを出て、心も体もふわふわしたまま建物の外に出て帰路に就く……までのワンセットがたまりません。ひたすら映画のことだけ考えてバスに乗るあの感じが楽しいんですよね。

 

ということで、ここ1ヶ月程で心に残った作品のまとめメモです。情緒がいい感じに引っ掻き回されて楽しかった……ネタバレ普通にしてます~

 

 

 

 

まず1冊目!

「さよなら絵梨」

藤本タツキ作品に関しては厄介オタクの自覚があるので、あまり他の人と感想を共有したくないんですよね…… チェンソーマン 第二部も楽しんでいますが、気持ち的にはどこかの無人島にでもある施設に隔離されて、 チェンソーマンのページにだけ繋がる端末でひとりきりで読ませてほしいよ~~~って感じです。厄介オタクがすぎる。

さよなら絵梨が公開された当時は色々あって残念ながら読める状態になかったので、単行本化してから読みました。その頃も相変わらず心身ともに低迷していたのですが、「フツーに聞いてくれ」がこれまた刺さって、急いで「さよなら絵梨」を買いに行った形です。

感想うっすら聞いてた感じ、賛否両論?らしいけど、どうなる……!?とドキドキしながら読みましたが、これがまたすご~~~~~~く良かった。

200ページある、短編としてはちょっと長めなお話のはずなのに一度も途中で本を閉じることなく、駆け抜けてしまいました。読み終わって暫くぼーっとして、そのあと無駄に部屋の中をぐるぐるしました。

さよ絵梨は絶妙な言葉選びとかそれぞれのコマの見せ方とか見開きの使い方とか、技術面で考えると色々すごいと思える部分が浮かんで……でも、そういうの取っ払って感情だけで考えると、どこがいいのか具体的には何も言えないけどとにかく良かった!!!!みたいな不思議な漫画でした。一応、物語のラストに着地した今でもこの漫画をどう解釈すればいいのか、この感情をなんと呼んだらいいのかわかりません。ストーリーの解釈についても、色んな方の考察や感想を漁ってみて自分なりに考えたりもしたのですが、どうにもうまくいかず……とりあえず、解釈とかわかんないけどおもしれー!!すげー!!!に落ち着かせました。数年後に読み返したらまた違った感想が生まれるんだろうな。

ちなみに一番印象に残っているのは「この頃より随分老けたね」のとこです。

 

 

 

2冊目!

小川洋子と読む 内田百閒アンソロジー

人生初の内田百閒でした。

そもそも私が小川先生の作品と出会ったのは小学生か中学生くらいのときで、最初に読んだのが「博士の愛した数式」でした。瑞々しい文章と柔らかであたたかい物語に感銘を受けたました。今でも心に残る作品のひとつです。この先何年か生きても、オールタイムベストには入っているだろうなと思っています……。

博士の~に感動した私は他の小川作品にも手を伸ばしてみたわけですが、当時はあまりピンと来ませんでした。小川先生の作品は幻想小説的なものが多く、むしろ博士のほうがちょっと浮いてるんですよね。今でこそ幻想的なものや耽美系の話も好きになりましたが、当時はそう言った作品をあまり読んでいなかったので小川作品とは長らく距離がありました。それからしばらくたって、皆川博子作品や川端康成三島由紀夫の「真夏の死」にはまってもっとこういう系統が読みたい!となり、巡り巡って小川洋子作品に戻ってきました。

今回、同じくちくま文庫から出ている内田百けん集成ではなく、こちらを選んだのは小川先生が選んだなら好みに合うのありそう~みたいな理由です。「小川洋子の偏愛短篇箱 」が結構面白かった記憶があったので……。

 

とっつきにくかったらどうしよう……と思いながら読み始めた本でしたが、面白かったです。ホラーや幻想的な話もあれば、心があたたまったりきゅっと切なくなるような人と人との交流を描いた話もあってこちらを飽きさせない構成……!「鶴」とか3ページなのに感じる不穏さと情景の美しさよ……「鶴」や「件」、「桃葉」は内田百閒入門にちょうどいいのではないかと思います。

 

で、今回私に最もぶっ刺さったのが「柳検校の小閑」です。

 

刺さりすぎて死ぬかと思った。のたうち回りました。正直、今回の本命は「サラサーテの盤」だったのですが、「柳検校の小閑」があまりに深く刺さって思っていたよりあっさり読み終えてしまい、めちゃくちゃもったいないことをしたな……と思いました。サラサーテも良いんですよ。ツィゴイネルワイゼン観よ~って思いましたし……でも、本を読み終わるまで柳検校の小骨が喉に刺さったままでした。今も残っています。

「柳検校の小閑」は語り手である検校 柳先生とその弟子である三木さんの交流を描いた作品です。と言っても、ふたりの会話は物語全体を見るとそんなに多くありません。柳先生の日常生活の要所要所に三木さんとの交流があるイメージです。二人の会話は少ないながらも、そのテンポ感とか距離感がなんとも言えずいいんですよね……特に九章のやりとりが好きです。ひゃ~とか言ってたら第十章で絶句しました。こんな終わり方なんて………………。読み終えてから改めてタイトルを見返して、だから「小閑」なのかと腑に落ちました。十章ではもう17年も経っていて、柳先生にとっては三木さんと過ごした時間より彼女のいない人生のほうが遥かに長くなっているんですよね。おそらく柳先生の人生はこれから何十年か続くでしょう。続けば続くほど、三木さんのいない人生のほうが長くなっていきます。そんな長い長い人生の中で、三木さんと過ごした時間は柳先生にとっての「小閑」になるんだな……と。「小閑 すこしのひま」……わ~~~ん!!!最後の一文がもう愛じゃん……。小川先生の解説文もまた染みます。とにかく精神をぎたぎたにされた一作でした。

 

 

3冊目です。

川端康成異相短篇集」

最近出た本!

川端康成先生にはラストで殴ってくる力強い~~……と思わされたことが何度もあります。「伊豆の踊子」のラストとか、「母の初恋」の雪子の最後のセリフには思わず感嘆しました。

今回最後にめちゃくちゃにされたのは「白い満月」です。

このお話、実は途中まではあまり乗れていなかったのですが終盤に主人公の妹である静江が亡くなり、お夏と再会してから徐々に引き込まれていきました。ほんとに終盤ですね。お夏と主人公の会話の運び方がなんだかいいなあと思っていたら、最後の最後、お夏の「私よく先生の夢を見ます。──痩せましたね。──胸の上の骨が噛めますね。」というセリフにガーンと殴られました。殴られて余韻に浸っている内にお話が幕を閉じてしまう。川端作品はこういうことが度々あります。こんな……こんな締め方ある!?!?!?次の「地獄」書き出しも中々なのにこの台詞に結構引っ張られてたよ……。

 

中盤でぐちゃぐちゃにされたパターンだと朝雲も良かったですね。

主人公 宮子と母があの方こと菊井先生と並び歩くシーン。

「宮子さんは、お兄さんがおありですわね。よそへお出しになりますの?」と、あの方は不意におっしゃった。「はあ、いつまでも子どもで困ってしまうんでございますよ。」と母は答えた。「そうでもありませんわ。もし学校へ聞き合わせがあったらなんと言いましょうかしら。」と、あの方は私の方を向いて、「感情の激しいお嬢さんだって言いましょうかしら。先生はずいぶんいじめられましたって。」私はくらくらと目の前が暗くなった。きゅっと息がつまった。「嘘よ、そんなこと。」と、あの方は明るく笑っておしまいになったけれど、私は並んで歩いているのが苦しかった。

うわっ…………!!!!まあ、この後先生のフォローが入り、宮子は幸福を感じるのですが……。

なんかこのシーン……来るものがあるというか……やばいですよね。このシーンまで宮子は菊井先生に積極的に近づいたり、そうと思えばつれなくしてみたりと情熱に浮かされて空回っているのですが、そんな状態のところにこの言葉がぴしゃんと浴びせられるのが……こう…………。母親の前で、でも母親には絶対にそうとは気づかれないよう向けられたこの言葉が……。

 

これからももっと川端作品読みたいですね……。

 

 

ラスト!

「嫌がってるキミが好き」

 

1巻読んだのはちょっと昔です。続き気になるな~と思っていたら完結したことを知り最終巻まで購入しました。今ならDMMで1~7巻まで70%pt還元、8巻は50%pt還元中なので気になる方は読んでみてください。

 

いや、なんかもうこの1巻と8巻の表紙の対比の時点で辛い……!!!!!でも最後まで読むとこの表紙にしかならないよね~って感じですね。この二人が白川みことと大槻まことである限り、ふたりとも心から幸せそうな表紙はありえないんですよ。7巻がポップでキュートな期待しちゃったけど……。

みことちゃんがどんどん目覚めていく様子は、おいおい……と思いつつも、このふたりなりの幸せな形に落ち着くだろうと思っていたんですよね。この8巻内でも、ほんとに直前までギャグっぽい明るいノリだったしさ……みことちゃんメイド回と最終回は同じ巻に載せていい内容じゃないよ。

 

まことくんが本物のみことちゃんを愛していたのか理想の彼女を愛していたのか問題については、私はまことくんは本当にみことちゃんを愛していたのだと解釈しました。

序盤のまことくんはお兄さんとのこともあり、みことちゃんを愛し彼女に嫌がられ続けることで自分を肯定したい思いもあったのだと思います。そもそも、まことくんがお兄さんにかけられた呪いは強大で、みことちゃんの嫌がる顔は大好きなはずなのに、お兄さんと同一視され軽蔑されることは激しく否定したり……それなのに本人も気づかぬ内にお兄さんに受けつられた価値観で愛情を示してしまったり……自分がしていることとお兄さんがしてきたことは同じなのだと気づき、さゆりさんの存在を認めた時点でまことくんにかけられた呪いは解けていきました。でも、その時点でもうみことちゃんは大分堕ちてしまっていたんですよね……普通のデートをしてみたり、これからなんとか丸く収まる方向にいくのか……!?と思わせたところで、秀一さん事件……はっきり自覚してしまうみことちゃん……辛い…………。あの事件がなければ……と思わなくもないですが、まあ遅かれ早かれだろうなあと思います。この二人のエンディングはもう決まっていて、事件が起きたことで少しそれが早まっただけのように感じました。まことくん本人も「ボクたちにハッピーエンドなんてないんだよ」って言ってたし……。

結果的にはああいう終わりだったわけですが、あの事件が起きるまでまことくんは葛藤しつつも今のみことちゃんに適応しようとしていましたし、別れのシーンも愛していたからこそ手放したと思うんですよね。好きだから。好きでいたいから。

8巻ラストのみことちゃんを思い出すシーンで、まことくんが大好きな嫌がってる顔以外のみことちゃんも思い出していたのが最大の答えじゃないのかな。

 

一方のみことちゃんはまことくんが好きだったというか……どちらかというと雛鳥が最初に見たものを親と思い込む「刷り込み」に近いというか、執着のような終わりだったと思います。みことちゃんはどこまでいっても自分が一番大好きです。自分しか見ていないから、まことくんが求める”白川みこと”に気づけません。でも、それを理解してまことくんの理想の嫌がり続けるみことちゃんになれてしまったら、まことくんの好きなお馬鹿なからっぽ女のみことちゃんじゃないんですよね。

価値がある子に戻ると言った割に、最終話のみことちゃんはそういう努力をするわけでもなく快楽に流されていますし……多分、みことちゃんのことだから最初の最初は努力しかけたんだと思いますよ。でもすぐに楽な方にいっちゃったんだろうなあ。

 

恋ではないけど、最後に思い出すくらいにはみことちゃんにとってまことくんの存在は大きく、自分を本当に殺してくれる相手として想像するくらいには恋に近いなにか……は流石に甘い妄想すぎますかね。みことちゃんは本当はまことくんに殺されたがってたんだよ!とまではいかないですが、せっかく殺されるならまことくんがいいなあくらいは思っていてほしいです。

 

あと、みことちゃんの性質についてはまことくんに変えられたというよりは元々持っていたものが開花しただけだと思っています。多分、秀一さんとでもいずれ開花したとだろうし、私的には秀一さんとのほうがこれ系のカップルの終わりとしてはハッピーエンドを迎えたんじゃないのかなと最後まで読んで思いました。秀一さんとなら、秀一さんがみことちゃんを殺して終わりだったんじゃないのかな~……ネカフェの話とか、なんかきらきら感があったじゃないですか……恋愛の波動というか……。

 

私は物語途中で主人公組との対比で存続を危ぶまれるふたりがラストにはなんだかんだベストな形に落ちついていて、一方主人公組は別れている……みたいなシチュエーションが好きなので、ラストのお兄さんとさゆりさんの関係にはにやけました。あの1ページでお兄さんもまた、まことくんの呪いから解放されてるのがわかるのすき……。

お兄さん&さゆりさん関連だと、まことくんが思い描いた自分たちとの対比が結構衝撃的でした。お兄さんとさゆりさんは、さゆりさんが首輪とリードを着けられた状態でお兄さんの足元に座り、リードをお兄さんが握っている状態でしたけど、みことちゃんとまことくんはふたり並んで立っている状態なんですよね。手も繋がず。まことくんの愛の変化をよく表しているいいシーンだと思う一方、そのままラストの展開も表しているようで切なくなります……。

 

あとがきの、まことくんはみことちゃんのような存在にまた出会ったら今度はその人間が芯になる……という鬼山先生の言葉にはでしょうねと思いました。本人がその類の発言してましたしね……まことくんは誰に対しても、多分いなくても生きてはいける強い人で…でもいないと人生つまらないなみたいな枠に入れている内に死ねたことはみことちゃんにとって幸福なのかもしれません。

初めて読んだときは、今後まことくんがみことちゃんの死とその理由を知っちゃったらどうなるんだろう~って思ったんですけど、冷静に読み返したら△年前ってなってるしスマホもPCもほぼ触らないまことくんが知る機会は永遠にないな……。そういう意味でも、彼に新たな芯が現れるまでの間は、かつてのベストパートナーでいつか会いに来てくれるかもしれない理想の存在として心に棲み続けられることが確定したのは幸せ……?でも想像してるの学生時代のみことちゃんで、死ぬ直前のみことちゃんじゃないじゃん!と言われたらそれまでですが……。

 

ラストの表情もな~~~~!!!!!!!これ、ストレートにまことくんが想像する理想の”嫌がってるキミ”と解釈していいのかな……でも、嫌がってるというよりは悲しそうにも見えるんですよね……。リンドウの花言葉は「悲しんでるあなたを愛する」らしいのですが…嫌がると悲しむはイコールじゃないしな……。幽霊説を唱えてる方もいて、それはそれで別のロマンがあっていいなと思いました。

 

感想や解釈を書いても書いても書ききれないというか、書いてる内にこの解釈あってるのか……?ってなる不思議な漫画でしたね。めちゃくちゃ良い感じに感情をぐちゃぐちゃにしていただけて楽しかったです……同じ癖を持った方は今すぐ読んでください!繰り返しになりますが、DMMだと25日までお得に買えるので……!!!!

 

 

 

また最後にめちゃくちゃにしてくるタイプの作品に出合いたいです。

【ネタバレ】祈りとは 女神の継承 感想

観てきました~。ネタバレがっつりの簡単な感想記事です。

 

 

 

 

 

 

あらすじ

小さな村で暮らす若く美しい女性ミンが、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。途方に暮れた母親は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。もしやミンは一族の新たな後継者として選ばれて憑依され、その影響でもがき苦しんでいるのではないかー。やがてニムはミンを救うために祈祷を行うが、彼女に取り憑いている何者かの正体は、ニムの想像をはるかに超えるほど強大な存在だった……。(公式サイトより)

 

感想

ポスターのイメージから、神に選ばれたが故に臨まない継承の儀式に参加させられるヒロイン……みたいなのを想像していました。村の人間に外堀埋められてどんどん追い詰められていく的な。ちょっと違いました……!

 

ミン役の女優さんの演技がすごい~。隠しカメラのとことか、動きや表情が本当に獣みたいで……おぞましさMAXで良かったです。突然出てくるところは思わずビクッて反応してしましました。劇場で声出さなくてよかった……。

私はニムが一番好きだったので、彼女の死は悲しい反面、他の皆のように肉体的な苦痛は伴わなくて良かった……とちょっと思いました。彼女が吐露した本音については、ノイとのバヤンに会ったことはあるか?存在するのか?という会話から、なんとなく予想していたのですが、まさかあんな風にエンディングに突入するとは……ニムの悲痛な叫びが心に来ました。

 

「女神の継承」ってタイトルだし、女神バヤンを無理やり降ろして悪霊撃退するのか……!?とかギリギリまで考えたりしていました。

 

 

 

 

以下、うまく消化しきれなかったあれそれとそれに対する自分なりの考えです。理解力低くてお恥ずかしい……。

 

疑問点と自己解釈

・ノイ、ニム姉妹の身に起こった不調って結局バヤンの影響だったの?→二人がバヤンの存在に懐疑的だったからなんとも……

この作品において、女神バヤンが本当に存在するのかどうかはあまり重要ではないと私は思っています。重要なのはノイが私情で神に背いたこと、巫女の役割を押し付けられたニムが神の存在を疑いつつも役割を全うしていたこと、そしてその果てに信仰を捨てたこと……ではないでしょうか。なので、これはあまり深く考えなくてもいいのかな~とも思っています。

 

・最初から神に選ばれたのはニムだった説ない?→運命とか最初から決まっていた~みたいな言葉が会話の中で出てきたので、思いついた説でした。女神バヤンの力は本物ということが前提の説ですね。

 

・マックとミンの関係は近親……ってことでいいの?→これについては、写真の中の二人の距離感とマニが言い淀んだことから確定だと思います。

 

・葬式のシーンでノイがニムに持ってくるよう頼んだのは何?→これはよくわからなかった……。

 

・盲目の老婆は何?→サンティに言及されるまで、彼女こそが呪いの正体だと思っていたのですが……。霊は複数って言ってたから老婆も含まれてるの?父方の家系に恨みを持つ人だった……?

 

・ニムが老婆の死後、特に言及しなかったのは何故?→ミンと接触?してたの見てたよね……?一瞬、もしかしてニムには視認出来なかったのか?と考えたりもしたのですが、カメラマンが言及しているので視認出来なかったってことはなさそう。うーん……。

 

・ミンとカメラマンを遠くから見つめていた人物は誰?→霊でいいのかな。それとも、ミンが過敏になっているという描写?

 

・父の家系の罪は犬食も関係している?→宗教上の理由などでタブーとされているところもあるようですが、女神の継承の舞台だと食べる人は食べてるっぽいのでそんなにでもないのかな……。日本なら犬神憑きとかも連想出来ますが。

 

・車のステッカーの話→上映中はなんとなくニュアンスはわかるような気がしていたのですが、改めて考えるとよくわからない。

 

・バヤンの首を切断したのは誰?→霊の物理パワー?実は私、このあたりからミン以外にも悪霊に憑りつかれている存在がいて秘密裏に儀式の邪魔をしていたって明かされるオチじゃないだろうな……と疑ったりしていました。

 

・マニ達は何故隠しカメラの映像を見た後も対処しなかったの?→ミンの部屋だけじゃなくて、自分たちの部屋にも鍵かせめて就寝中はバリケードでもしておけばいいのにな~ってちょっと思ってしまいました。鍵かけないであの状態の人間と一つ屋根の下はめちゃくちゃ怖くない?

 

・パンがベビーベッドに眠る息子を認識出来なかったのは何故?→霊による認識阻害ってことかな。

 

・儀式中のノイも憑りつかれたの?それとも力を継承したという妄想で暴走した?→線香を逆に刺したり明らかに邪法…ってことをしてたので、憑りつかれたのかなって思うんですけど、ミンへの態度がなあ。あれは一時的に正気に戻っただけ?

 

・ニムの死因は神を疑ったから?→「ライタイ」ってことだったけど……夢のない解釈だと一連の出来事でかなり消耗していましたし、ストレスや過労によるものって感じですけど、ここはバヤンに背いたからってことにしておきたい。

 

・この映像を持ち帰り、映画化したのは誰なの?→普段はこういうの気にしない派なのですが、この作品に関して気になった。細かなところまで作りこんでいる作品ですし、最後にニムのインタビューを持ってくる構成とか、絶対あの一連の出来事を見届けた人物が持ち帰ってるはずなんだよな~!!って思うのですが、どうでしょう……。

 

大体こんな感じです。うーんとりあえず哭声見返そうかな……そしたら、また新たな疑問点や解釈が生まれるのではないかなと思うので……!

【ネタバレ】必要のない鍵って、あると思いますか? Inclusion〜インクルージョン〜 感想

burstonから発売されたアダルトゲーム、「Inclusion〜インクルージョン〜」をプレイした感想と簡易メモみたいな記事です。ネタバレしていますので、ご注意ください~

 

こちらの作品は、dlsiteとFANZAで8月16日まで500円で購入できますので、気になった方はチェックしてみてください。FANZAのほうがセール時間終了まで3時間長いよ!

 

 

 

 

 

「Inclusion〜インクルージョン〜」

 

老朽化のため、取り壊しが決まりながらもいまだ着工されずにいる鳴島団地3号棟。
物語の舞台はそんな最近みかけるようになった、日常の風景から始まる。

愛犬ガッツとの散歩の途中で出会ってしまった「千紗」。
組織に追われ、たどり着いてしまった「龍哉」。
見てはいけないものを見てしまった「遥」。
大切な欠片を探し続ける「史佳」。
真実を手に入れたかった「喬」。
真実を知りたくはなかった「奈依」。
出会いたかった「裕紀」。
信じ続けた「佐里」。

絡み合い交錯しあう人々の想い。真実の糸。新生ブランド「ブーストオン」が贈るマルチサイトノベル (dlsiteより引用)

 

 

あらすじはこんな感じです。

 

・まず初めに3つのシナリオが解放されており、それを全部読んだら別のシナリオが3つ解放される……というような形式になっています。「街 〜運命の交差点〜」とか「428 〜封鎖された渋谷で〜」と似たような感じです。

・ボイスは無く、BGMと効果音のみです。

・1シナリオ大体30分前後で読み終わりました。一番早くて20分くらいかな?読むのが早い方ならもっと短く済むかもしれません。

・千紗、龍哉、遥、喬、奈依の5人のシナリオは本編を読み終わった直後にエピローグが解放されます。エピローグは大体2分くらいで読み終わります。

・史佳のシナリオを読了後、エピローグの代わりに佐里シナリオが解放→佐里シナリオ読了後 裕紀シナリオ解放→最終シナリオ解放……という流れです。最終シナリオは10分くらいで読み終わりました。

 

個人的には、クリア後に全シナリオを読み返せないのがちょっとな……と思ってしまいました。伏線の確認とかしたかったかな。スキップも遅めなので、気になるシーンがある方は、セーブしておいたほうがいいと思います。アダルトシーンは読み返せるようなので、その部分のセーブは大丈夫ですよ~

私はあらすじとたかみち先生のイラストに惹かれて今作を購入しました。欲を言えばもう少したかみち先生のスチルを見たかったのですが、ゲーム自体が短めなのでこれぐらいの枚数が妥当……なのかな?

 

 

私がプレイした順番は、龍哉→遥→千紗→奈依→喬→史佳→佐里→裕紀→最終です。

各シナリオのちょっとした感想はこんな感じ。

 

「永津龍哉シナリオ」

ヤクザ、跡目争い、呪いの指輪と錠剤、霊能者などこちらの興味を引くような要素がてんこ盛りでわくわくしました。龍哉シナリオのメインは組の後継者問題と、野心を持たずに生きてきた龍哉が守り抜きたい相手を見つけるまでの過程なので、このゲームの軸である女子高生連続殺人事件はあまり絡んできません。なので、シナリオ読了後に事件がさらっと解決していてちょっと驚きました。もしこのゲームが選択肢のあるものだったら、指輪を誰に渡すかのシーンで分岐したのかな~。出会い的に喬ともっと交流すると思っていました。

 

「澤田遥シナリオ」

私は彼女のルートが一番好きです。遥さん強い。遺書を書く為にホラー小説を購入するのがまず好きでしたね。表紙でそれとわかるようなものを購入したみたいですが、どんな本を購入したのか気になります。金田一シリーズの表紙のような、おどろおどろしいやつでしょうか。

龍哉シナリオと違って、ホラー的にも事件的にも結構怖めのシナリオだったなと思います。あと来宝とのシーンは結構ドキドキしました。

折角、協力を申し出たわりには来宝のその後に関わっていないオチなのがちょっと残念かも……来宝が自力で牡丹を見つけ出すことに意義がある、ということかな。ヒデキくんの正体は予想外でしたが、ラストの遥さんが元気を取り戻していたのでOKです。

 

「嘉納千紗シナリオ」

流れとしては龍哉シナリオの裏側を見てる感じかな。二人の行動を共にする時間が長いので、龍哉ルート+事件に関わる要素が少しというような形。

個人的には相当恨みを買ってそうな今枝麻衣子達によるいじめを千紗ちゃんが知らなかったことに違和感があったのですが、隣のクラスなら仕方ないのかな……

 

「望月奈依シナリオ」

被害者がクズだと事件の真相があまり気にならなくなる人間なので、このシナリオはちょっと困りました。今枝麻衣子の人物像が一貫しているところや、奈依自身も麻衣子のひととなりを把握した上で事件を追っているところはよかったと思うのですが、プレイ中に何度も「この子の死の真相ってそこまでして追うこと?」とも思ってしまいました……。遥シナリオに出てきたゴスロリの子、香城佐里の名前も判明し物語は徐々に真相に近づいてきました。もしかしたら、奈依の佐里に対する態度も乗り切れなかった理由のひとつかもしれません……

 

「司馬喬シナリオ」

まさか佐里とあんなことがあったとは……だから、奈依シナリオでああいう反応をしたんだなと腑に落ちました。祖父の抱えていたものと必要のない鍵の行方。最後の最後で来宝が出てきたのにちょっとびっくりしました。この時点で常石のおぞましさがあふれ出ていますが、まさかどんどんおぞましさアップしていくとはね。

喬と奈依でセットみたいなつくりになっているんですが、まさか外でするとは思っていませんでした。管理人室開けろ。

 

「来宝史佳シナリオ」

霊能力者の一族!複雑な血縁関係!当主代行!マモリ様!呪術!

心躍る要素が多くて楽しかったです。来宝一族メインでも1本書けたのでは?と思ってしまうほど。スピンオフお待ちしております。嫌味で腹黒な当主代行が気になります。史佳と顔は似ているって設定が美味しい。ラストのスチルに後ろ姿だけ写っていましたが、正面も見たかったな~

来宝のシナリオは今までの5人の総まとめって感じですね。各々の裏ではこうなっていたんだな~って感じです。牡丹を失った彼女の悲痛さが、伝わってくる話でした。

 

「香城佐里シナリオ」

会話シーンが少なめなこともあってか、一番早く読み終わりました。

いじめシーンが辛い。佐里は各シナリオで「あれではいじめられてもしょうがない」みたいな印象を持たれていることが描写されます。確かに彼女は言動も服装も人とはちょっと違いますし、社交性もないとは思います。でも、それはいじめてもいい理由にはならないはずです。各シナリオを読んでいてそこだけはどうにも引っかかってしまいました。確かに標的にされるだろうなってのはわかるんですけど、うーん……。

読み返していないので確証を持てないのですが、幼少期の佐里に408号室の騎士様のことを教えたのは常石……?幼い女の子たちを誘い出すために、常石が流した噂だったんですかね。それとも常石の死後に噂が流れだしたのかな。作中ではメジャーな噂じゃないと言うか、佐里しか触れていない噂なので、いつ頃誕生したものなのかとかよくわからないんですよね。

 

「西原裕紀シナリオ」

サ、サイコパスだ…………!?!?!?!?!?!?

佐里シナリオで血濡れの王子様(騎士様だけど)みたいに彼を描写しておいて、この落差。特に佐里と何かあったとかそういうわけではなく、完全にひとめぼれだったんですね。このシナリオで麻衣子が佐里を目の敵にする理由がふわっとわかるようになっていますが、だからって…うーん……という感じでした。

西原が殺人のみならず被害者たちを……していたのは正直驚きました。この描写あったっけ!?事情が事情なので報道規制がかけられていたのでしょうか。あと、西原くんは素手で犯行を行い、体液もそのままっぽかったので、その当たりで早めに捕まるのでは……?とちょっと思いました。バラバラにしていたから、そういう部位は発見が遅れたんですかね……。

事件の真相を知って、なんだかますます佐里が不憫に思えました。いじめられるし、大切なものは盗られるし、両親は不仲で放置されるし、幼少期に常石による被害にあった疑惑があるし、助けてくれた騎士様はサイコパスだし……全てを知ったうえで佐里と西原の寄り添うスチルを見ると、騎士と姫みたいな構図で描かれているのがほんと憎いな~~!!!出頭するまでの会話も併せて、なんか、ねえ。

佐里は西原が出所するまで待っていたわけですが、西原シナリオで描かれた真実と合わせると、正直よく待ってたなあ……って思いました。でも、彼女にはもう縋るものがなかったんですよね……。

 

「最終シナリオ」

牡丹視点で描かれる、彼女の死の真相。常石がほんとおぞましい……母親とご近所さんの会話を聞いてしまい、常石のことを余計に言い出せなくなるシーンは心が痛くなりました。常石との会話などが描かれるのかなと思っていたのですが、そのあたりは控えめで、彼女の心情メインの話でしたね。最後に来宝と再会出来たシーンは、やっぱりグッと来ました。ふたりとも、良かったね……。

 

 

ノベルゲーやるのは久しぶりだったのでどうなることやらと思っていたのですが、面白かったです!さくさくっと進められて良かった~。

大体の真相は明かされたと思うのですが、

・喬の祖父が常石を庇い続けた理由

・408号室の騎士様の噂の出どころ

がちょっとわからないまま……かな?再プレイするときには、このあたりを念頭に置いて読み直したいですね。佐里の回想で出てきた「佐里ちゃんはパパとママのこと~」みたいなことを言っていたのが常石……?佐里に噂を教えたのも常石……?うーん。

 

調べたらどうやらドラマCDと小説版があるようです。ドラマCDのほうは現在聴く手段がないみたいなのですが、小説版はなんと電子書籍化されていました!しかも無料!!絶版後に無料で電子書籍化、新しい話も収録してくださったみたいです……めちゃくちゃありがたい……オタクに優しい。

KindlekoboBOOK☆WALKERにてダウンロード可能とのこと。とりあえずKindle版を貼っておきます。私もこれから読みます~

 

 

 

 

 

 

ぼくらはみんな生きている コーポ・ア・コーポ4巻

 

 

この作品を読むといつも、梅雨から夏にかけての気怠い空気を感じます。じめじめとした陰鬱さ、汗でべたつく身体、腕に張り付く髪の毛、少しでも暑さを避けるために夕方コンビニまで行くときのあの道のりとか、自販機で買った飲み物を飲むときの一口目とか。とかとかとか。とにかく、この作品が持つ独特の雰囲気が私は好きです。

 

4巻には

第20話 松永姉

第21話 石田父

第22話 昔のカズオ

第23話 チカ

第24話 辰巳家

第25話 松永

が収録されています。4巻はカズオ成分多めです。

 

第20話 松永姉

松永姉の美樹ちゃん。登場は3巻16話以来かな?美樹みたいな子と沢田みたいな子が仲良いのはなんだかわかる気がします。ちょっとしたことでイライラしたり悩んだりして、でもメンタル回復するのもまたちょっとしたことで。人生こういうことの繰り返し、積み重ねなんだよな……としみじみ思いました。そんなことより美樹ちゃんのぽわぽわ彼氏かわいい。

 

第21話 石田父

石田君は女の人を惹きつける要素を持っていますが、石田父も……なんというか、石田君のお父さんなんだなあ。この回に出てくるタカヒロがもう~~~めちゃくちゃ可愛いのなんの。まだ単行本未収録ですが彼が主役の回もあるので、タカヒロ気になった方は是非COMIC MeDuさんのほうで読んでください~。ラスト、石田君が車から降りる直前の空気感とか、石田父の絶妙な表情がすきです。

 

第22話 昔のカズオ

3巻14、15話に引き続きカズオの話です。奥さんチカちゃんとはこうやって出会ったのね。元シン中の歯ぁスカスカこと遥さんも同じお店にいたんですね~。いずれ遥さんとか他の女の子がメインの回も来るのかな。個人的にはユマちゃんが一番気になるので、また誰かの回想とかで再登場してくれないかな~と思っています。帝王切開の話知らなかったなぁ……。

 

第23話 チカ

チカちゃんから見たカズオってこんな感じだったんだな~!得体の知れない男の人だ…こわっ~……でもチカちゃんがどうしてカズオを家に招き入れたのかもわかる気がします。元客みたいな自分は家の話するのに、こっちにはさせない人いるよな~って笑った。この回で一番好きなセリフはタマちゃんの「ヤバめの話は相手がウケるか同情買えるレベルまでのやつにしよ♡」です。私はいつもこれを見誤るので肝に銘じておきます。クビにされたリコさんの行く末が気になる。

 

第24話 辰巳家

相変わらず寿恵さんの存在感がすごい。これでも今まで1回も顔が出ていないのに。最近は妹とコーポ・ア・コーポの話をすると必ず寿恵さんの話が出ます。

ユリちゃんにシーツ越しに声をかけられたときの中条さんの表情の変化が好きです。その後のボタンが取れたことをユリちゃんに教える一連の流れも良い。この二人だからこういう空気感になる。ブラインドや網戸越しに描かれる登場人物たちの様子を見ていると、なんだかこっそり彼らを覗いているような気持ちになりました。

 

第25話 松永

「見つけた時、動物とか殺してたらどうしよう」

松永と友田のぐらぐらとした危うい関係。作者の岩浪先生が「松永に彼女が出来た場合、松永の彼女は友田のことめちゃくちゃ嫌いだと思う」みたいなことを以前ツイートしていらしたのを思い出しました。この二人の関係は卒業後も続くのかな。松永くんは兎も角、卒業後の友田くんがあんまり想像できないのでなんとも言えないですね。友田君のお母さんの件もあるし。この二人のぎりぎりの関係性が好きなので、もう少しこのままでいてほしいものです。

 

4巻はQ&Aまとめと、相関図と各キャラクターのプロフィールまとめが載っているので連載追ってる派の方々もぜひ買ってください……!Q&Aはめっちゃ細かいので紙派の人はルーペとか定規とかあると読みやすいかもです。それぞれの好きなタイプ・芸能人が、わかる~~~!!!って感じで良かったです。岡林さんとこずえさんのお互いのタイプで唸った。

4巻もめっちゃ楽しませていただきました。5巻も楽しみです!いえーい

 

ヒロアカTUM 3巻

 

 

Mission 10 峰田くんのモテ期 から

11 緑の谷の守り神

12 心操くんのおつかい

13 ハイカロリー・ガールズ

14 シャッフれ!1-A

15 ワイルドの道はケモノ道

16 ソウル一家の日本旅行 まで収録されています~

 

年に1冊のペースで続いているこの作品も、もう3巻目!本編は最終章に入り、死者も出て、かなり殺伐とした展開になっているので、こちらのほのぼのさが癒しです。

 

B組メインのお話や、心操くんメインのお話があったのが嬉しかったです。本編ではあまり目立たないキャラや、珍しい組み合わせを見られるのがこの作品の魅力だと思うので、もっと連載が続いて、色んなキャラのお話が描かれること願っています。個人的には、せっかくチームアップミッションという新制度が導入されたという設定なのだから、もっと色々なプロヒーローと生徒たちの組み合わせが見たいなあ……と思ったり。

 

16話を読んで、映画が観たくなりました。ロディくん、人気なのはなんとなく知っていたのですが、こういう性格だったんですね。かわいい~。